痛みのメリット・デメリット
「痛い」と感じることは我々人間にとって俯瞰だと感じることですが、生きていく上で必要な感覚、痛みを感じるからこそ生きていけると言えると思います。
例えば、ガラスの破片で手を切ったときに感じる痛みによって「ガラスの破片は危険だ」ということを学習し、以後は迂闊に手を出すことを気をつけるようになります。
痛みは人に危険なものとそうでないものを認識させ、危険からの回避や逃避を学習させます。
さらに、尖ったものや熱いものを触って痛みを感じたときに手を引っ込めるという「緊急回避」的な意味もあります。
遺伝性疾患で痛みを感じない「先天性無痛無汗症」というものがありますが、この病気の子供は怪我をしても痛みを感じることができないため、学習する機会がないため危険か否かの区別がつきにくいとされています。
また、人は体のどこかに痛みがあればそこに注意を払ってケガや病気を認識し、自分で手当てをしたり病院に行ったりとなにかしらの処置が行えますし、怪我を放置していれば患部に炎症などが起こり痛みがひどくなるため、悪化していることがわかります。
これらのように、痛みは体の不具合や損傷の程度、生じている部位を知らせる「警告信号」の役割を担っています。
そのため、痛みを感じることで体の異常に気づくことができ、生命を脅かされるような状態になる前に対処ができるのです。
しかし、警告信号としての役割を有している痛みは、多くが病気や怪我が治れば消失しますが、治癒しているにもかかわらず痛みの続くものは警告信号や学習などの役割はありません。
これを「慢性痛」といますが、これは怪我が治っても痛みが続き、患者の「QOL(生活の質)」を低下させるので警告信号としての役割を有していません。
例えば、腰が痛く長い時間活動できないためじっとして動かない時間が長くなり筋力や体力が低下する、というのは警告信号としての役割のない痛みによってQOLが低下することの一つです。
治療という観点からすると、警告信号や学習としての役割を持っている「有益な痛み」と、慢性痛のようにその役割のない「有害な痛み」があるということになります。
「痛み」には、警告信号や学習としての役割があり危険を回避する判断ができるようになるメリットと、慢性的に続く場合はQOLを低下させるデメリットがあるということを覚えておきましょう。
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