接骨院で骨折・脱臼の治療を受けるために必要なこと
接骨院では基本的に私のような『柔道整復師』という医療系国家資格を所持しているものが施術を行います。
中には鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師、整体師などが施術を行う接骨院もありますが(保険を使わずに施術を受けているのなら問題なし)、接骨院で健康保険を使って施術を受ける場合は必ず柔道整復師が施術を行わなければいけません。
今までにも柔道整復師が保険の請求ができる案件について幾度かお話ししていますが、柔道整復師は『負傷の原因が明らかな外傷性(ケガ)のもの』のみが保険請求できる案件です。
具体的に何が『外傷』に当たるかというと、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷がそれに該当します。
骨折とは骨が折れること、脱臼とは関節が外れること、捻挫とは靱帯を部分的に損傷すること、打撲と挫傷はともに筋肉を損傷することですがその傷め方によって呼称が変わります。
その中で捻挫・打撲・挫傷に関しては接骨院で治療を受けるときの注意点はありませんが、骨折と脱臼に関してはあまり知られていないルールがあります。
それは『応急手当を除き、柔道整復師による骨折・脱臼の治療を受ける場合は医師の同意が必要*1』というものです。
*1
柔道整復師法第17条には【柔道整復師は、骨折、脱臼、打撲、捻挫の患部に施術をできるが、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当てをする場合は、この限りではない】とあり、医師の指示を得ずに応急手当てではなく脱臼または骨折の患部に施術をした場合、30万円以下の罰金に処せられる。(同法第30条第2号)
医師の同意
同意を得る医師は整形外科以外の医師でもよいが、歯科医師は含まない。また、同意を得る方法としては書面であっても口頭であってもよいが、医師が直接患者を診察することが必要である。この同意は個々の患者が医師から得ても、施術者が直接医師から得てもよい。
応急手当
脱臼、骨折の場合に医師の診察を受けるまで放置すれば、生命又は身体に重大な危害をきたす恐れがあるとき、柔道整復師がその業務の範囲内に置いて幹部を一応整復する行為をいう。止血剤を注射したり、強心剤を注射することはもちろん許されず、また、応急手当の後、医師の同意を受けず引き続き施術をすることはできない。
『応急手当てを除き、骨折・脱臼の施術には医師の同意が必要』ということは我々柔道整復師に関する『柔道整復師法』にて明記されています。
たまに同業者でも『医師の同意がなくても、保険の請求さえしなければ施術をしていい』と言う人もいますが、上記の注釈にあるように『応急手当を除き、骨折・脱臼の施術には医師の同意が必要』ということは柔道整復師法第17条にて明記されており、同法第17条は柔道整復師の施術の制限に関する部分であるため、保険を請求するかしないかは全く関係ありません。
そのため、医師の同意が得られない場合、保険を請求するかしないかに関わらず患部に施術すること自体が禁止されています。
当院では基本的に患者さん自身に『接骨院で骨折・脱臼の施術を受けたい旨』を直接医師に伝えてもらうようにしています。
もちろん全てが医師の同意を得られるわけではなく、医師の同意を得られない場合は残念ながら私は骨折・脱臼の施術をすることができないので引き続き整形外科に通うように伝えることしかできません。
当院にご相談に来ていただいたからには患者さんの苦痛を減らすために尽力したい気持ちは山より大きいですが、そんな私の気持ちより大きい法律の壁に阻まれます。
同意を得られない理由として考えられるものには様々ありますが、『骨折した直後でギプスをしているから同意しない』『骨折・脱臼にと同時に筋肉・神経・血管の損傷があるから同意しない』というのが多いように感じますが、中には『柔道整復師のことが親の仇より憎い・嫌い』というパターンもあります。
いずれにせよ『同意を得られなかった』という事実に変わりはないため、私自身が施術できないことに涙を流すほかありません。
我々柔道整復師はなんでも自由に施術できるわけではなく、一定の制限がかかった上で施術する対象を見定めています。
皆さんも接骨院に骨折・脱臼の施術を相談する際は医師の同意を得てからにしましょう。
0コメント