柔道整復師が使う「亜急性の損傷」って何?
体の組織を損傷するときにかかる力のことを「外力」と言いますが、我々柔道整復師は組織が損傷するときの力の分類に「急性」「亜急性」という語を用います。
これらについて柔道整復学ではこう記載されています。
【急性】
原因と結果の間にはっきりとした直接的関係が存在するもので、落下、直接の打撃、骨・関節・軟部組織に加えられた瞬発的な力によって発生する。
【亜急性(蓄積性あるいは反復性)】
反復あるいは持続される力によって、はっきりとした原因が自覚できないにも関わらず損傷が発生する。
この中には、臨床症状が突然発生するものと、徐々に出現してくるものがある。
前者は、先に述べた荷重不均衡状態、あるいは静力学的機能不全の状態下で損傷される場合が多く、組織損傷が拡大していくなかで、外力として認知できない場合あるいは軽微な外力で突然発生したかのように機能不全に陥る。
後者は、静力学的機能不全の状態であることが多く、症状は次のような経過をたどることがある。
まず疲労感を覚えやすくなることで、身体に何か異常があることに気づくが、当初はそれを強く感じない。
経過とともに疲労するのが早くなり、また安静によっても容易に回復しなくなることで、それを損傷として認識するようになる。
次いで、この疲労状態は疼痛となって現れ、さらに症状が強くなると、局所の腫脹、発赤などが現れたりする。
●亜急性損傷は、以下に示すような分類がなされる。
①使いすぎ overuse
②使い方の間違い misuse
③不使用後の急な負荷 disuse
*柔道整復学・理論編 改訂第5版より引用
このように柔道整復学という学問では損傷時に加わる力に対して「亜急性」という言葉を用いるのですが、医学では「亜急性」といえば経過した時間に対して用いる語であり、「外力」に対して用いる語ではないそうです。
当然柔道整復師も経過した時間に対して「亜急性」を用いますが、「亜急性」の後につく語によって意味が変わります。
「亜急性損傷・亜急性外力」であれば損傷時にかかる力の分類、「亜急性期」であれば経過した時間の分類という形になります。
「亜急性損傷」で最もイメージがつきやすいものは骨の「疲労骨折」ではないかと思いますが、これは「一度では骨折を起こさない程度の外力が持続的に作用するか、または一方向に衝撃性外力が繰り返して作用し、それが集積されて発生するもの」と柔道整復学に記載されています。
「亜急性期」とは概ね『病気にかかって急に進行するのが「急性」、病気が進行しない、あるいは極めてゆっくり進行するのが「慢性」、その間で急激ではないが徐々に進行するのが「亜急性」』というように用いられます。
(難病情報センターHPより引用)
同じ「亜急性」を用いるのにこれだけ意味が異なるとややこしい気がしますが、ここが医師と柔道整復師の間で溝ができている理由の一つではないでしょうか。
ちなみに「亜」とは「上位や主たるものに次ぐ、準ずる」という意味であり、「亜急性」とは「急性に準ずる」ということになります。
柔道整復学という学問で正式に用いられる語であるのは間違いのないことではありますが、原因と結果(損傷)との間にはっきりとした直接的な関係の証明が難しいこともあり、健康保険の請求が通ることは難しいと感じています。
健康保険の請求には明確な負傷原因が必要であるため、それを証明することが難しい「亜急性損傷」については請求が通りにくいです。
「亜急性損傷」に対する施術も柔道整復師の業務範囲であるのでご相談いただければ対応しますが、健康保険の請求ができるかどうかは状況によると言ったところでしょうか。
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