関節可動域制限の発生要因
1、年齢の影響
関節周囲の軟部組織を構成する結合組織(その主要成分のコラーゲン)が加齢によって器質的に変化をすることが主な原因と考えられる。
→生物学的影響に由来するため予防が難しい。
→結合組織だけでなく骨格筋にも加齢の影響は認められる。
→筋量そのものの減少、筋力発揮を司る運動単位数の減少などによる筋力低下。
→年齢の要因は直接的に関節不動を惹起させるのもではないが二次的要因として関与。
→結果的に身体活動が低下し関節運動も減少することで関節の不動状態が長期化する。
2、罹患期間の影響
疾病(先行研究の対象疾患は脳血管疾患)の急性期での関節可動域制限は対象者の約4割であるが、回復期・維持期では対象者の約9割に関節可動域制限が認められる。
→脳血管疾患の急性期は弛緩性麻痺を呈するため筋収縮の影響による関節可動域制限は生じにくい。
→回復期においては痙縮が出現することが多く痛みを伴うことも少なくないため、痙縮や痛みに伴う筋スパズムといった筋収縮の影響が強く現れ関節の不動が惹起される。
→疾病発症後は身体活動が低下し、その期間が長ければ長いほど関節の不動が長期化する。
→身体活動を高めて関節運動の時間を多くすることが重要。
3、日常生活活動能力の影響
日常生活活動能力が低いと関節運動の時間も短くなり、結果的に関節の不動が惹起される。
→日常生活活動能力は関節可動域制限の発生要因として極めて重要である。
→関節可動域制限が日常生活活動能力の低下を引き起こす要因とも考えられる。
→関節可動域制限の存在が日常生活活動能力の低下を招き、それが更なる関節の不動を招き関節可動域制限を悪化させる。
4、痛みの影響
抹消組織が傷害を受け痛みが発生している場合(急性痛)、抹消組織の傷害が完治あるいは傷害がないにも関わらず痛みが発生している場合(慢性痛)、いずれにおいても脊髄後角は感作状態にあり、これにより運動神経が刺激され筋スパズムが惹起される。
→この状態の維持により関節の不動が継続され、これが直接的に影響し関節可動域制限が発生する。
→筋スパズム(持続的な筋収縮≠一過性の収縮)は抹消組織の乏血を招き、新たな痛み物質の発生による痛みの悪循環の形成。
→慢性痛の発生メカニズムとされる神経系の可逆的変化も関節不動によって惹起される。
→痛みの発生による筋収縮の惹起が関節の不動を招き、関節の不動が痛みの増加・新たな痛みの発生となり関節可動域制限の発生・進行となる。
5、浮腫の影響
外傷後の炎症期は抹消血管の透過性亢進により傷害部周囲は組織液が貯留し、同時に好中球やマクロファージ、線維芽細胞などの細胞浸潤がみられ、結合組織の造成が惹起される。
→これが続くと周囲軟部組織は低栄養・低酸素状態が強いられ壊死を生じ、これを貪食する目的で細胞浸潤が活発になる。
→筋繊維は特に影響を受けやすく、再生困難な場合は消化された筋繊維を置換するように結合組織の増生がみられる。
→浮腫の発生は軟部組織の器質的変化を生み出す為、関節可動域制限の発生に直接的な影響を及ぼす。
→炎症期は必ずというほど痛みを伴い、マクロファージなどから産生される炎症性サイトカインは痛みの増強を生む。
→浮腫と痛みが共存することで関節の不動状態が継続される。
→筋ポンプの減弱が浮腫の助長につながり悪循環が形成される。
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